バンドのメンバを集めて、課題曲を決めて、さあスタジオ練習だ!と意気込んで音を出してみたものの、ある楽器は音が大きく、ボーカルは小さくて聞こえない、など各パートの音量バランスが最適ではないことがはじめてのバンド活動やはじめてのメンバで集まったときは起きがちです。
初心者メンバや途中加入メンバは遠慮して音が小さい、徐々に慣れてくると音が大きくなり全体的に爆音になってしまう、なんてこともバンドあるあるですね。
「バンドで最終的にはライブで観客に聴いてもらう」という目標があるとすると、ライブ本番では専門知識をもつPAさんが全体の音の調整をしてくれるかもしれませんが、スタジオでは自分たちで最適なバンド全体の音量バランスを意識してお互いの音を確認しながら調整し練習する必要があります。
バンドでやる曲やジャンル(ロック?POPS?JAZZ?)によって、また楽器パートやメンバ個々人によって感性も区々ですが、全体の音量バランスを整える場合の考え方には一定のルールがあると思っていて、バンド活動する中で基準としている考え方をまとめてみました。
前提としてパートはシンプルに「ボーカル」「ドラム」「ベース」「ギター」の4つとして解説します。
各楽器の特性
まず各楽器のおおまかな特性を知っておく必要があり3つの観点でまとめると次のとおりです。この特性を踏まえて音の大きさを調整する順番を決めていきます。
①マイクやアンプを通して音を出す楽器か | ②個人による音の大小差 | ③楽器の音域 | |
ドラム | × | 大きい(力強さ等) | 低(バスドラ) 中(スネア) 高(ハイハット) |
ベース | 〇 | 小さい(アンプ接続) | 低 |
ボーカル | 〇 | 大きい(声量等) | 中・高 |
ギター | 〇 | 小さい (アンプ接続) | 中・高 |
優先順位1は「ドラム」
「①マイクやアンプを通して音を出す楽器」に該当せず、かつ「②個人による音の大小差」が大きい「ドラム」は音量調整する余地が小さいので、はじめに「ドラム」の音量を基準にする必要があります。曲にもよりますがパワフルなドラマーと繊細なドラマーとでは、かなり音の大きさも違ってきます。
優先順位2は「ベース」
次に優先したほうがよい楽器の順位については諸説ありますが、僕はロックが好きであり、ドラムとベースによるリズム隊の音のバランスが大切で、ボーカルとギターはリズム隊がおりなすグルーブ感のある大海原に乗るパートだと思っているので「ベース」がドラムと1:1の音量バランスで聞こえるように音量設定するのが良いと考えています。実際にはドラマーがリズムを叩きながら、ドラマーにとってリズム隊の相棒となるベース音が適度に聞こえることが重要なので、最終的にはドラマーにベースの音量バランスを調整してもらうことが有効です。
優先順位3は「ボーカル」
歌もののバンド演奏を観客に聞かせるときに、ボーカルが聞こえないのは致命的です。各パートに埋もれずボーカル音を響かせる必要がありますが、ボーカルが他のパートと異なる特徴としては唯一「マイク」を通すパートということです。
ボーカルのマイクは基本的にはミキサーに接続し、ミキサーからアンプにつないで音を出力します。マイクはミキサーでの設定でギターやベースのようにボリュームを上げることはできますが、異なる点はマイクはボーカル以外の周囲の音も拾ってしまいハウリング を起こす原因になるという点です。
音量設定の手順としては、まずボーカルの音量はドラム音(特に音域が重なるスネア・ハイハット等)が鳴っていてもはっきり聞こえるレベルまでミキサーのGAIN(音量のボリューム)を上げます。
次に可能な限りハウリングが起きないようミキサーで設定を行います(①EQで低音や高音を下げる②HPF 80HzのスイッチをONし低音域をカットする③ハウリングのもととなるリバーブ(いわゆるエコー)やコンプレッサー(音の大小を自動調整する機能)をかけすぎない、など)。
そして ボーカルの背後方向からマイクに向けて音が飛び、マイクがボーカル以外の音を拾うのを避けるため、ボーカルのマイクがドラムやギター・ベースのアンプに向かないようにします。
ハウリングの原因となるGAINのあげすぎは、練習により声量をあげていくことで抑えることができます。
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優先順位4は「ギター」
エレキギターはバンドの華ですが、音域がボーカルと重複する場合もあるので、ギターの音でボーカルが聞こえないという事象を起こさないように最適な音量を見つけていきます。
音はずっと同じ大きさではなくバッキングのときは音量を抑えてギターソロではエフェクターを使って大きくスイッチするといった柔軟なギタリストのスキルも求められます。
バンドにおけるアコースティックギターは?
「アコースティックギター」がバンド編成の爆音の中に入ると、どうしても音が埋もれてしまいます。ともすればピックでストロークするカツカツとした音しか聞こえない場合もあるかもしれません。
GibsonのJ-45は中音域の鳴りが強いためバンド編成の中でも存在感を持つことができるアコースティックギターだと言われています。一方でギターの個体選定において留意点もあるギターでもあり次の記事で紹介していますのでご参照ください。
関連記事:Gibson J-45とはどんなアコギ?魅力は? ~ 斉藤和義の表現
また、アコースティックギターであっても、ここぞというときは音を強くブーストしたりリバーブ(エコー)を効かせたりすることで存在感を出すこともできます。アコギ専用のプリアンプ(以下の関連記事で紹介)を使うとそういった表現の幅を広げることができます。
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ロックのバンド編成において、アコースティックギターを活かした曲をこちらの記事で紹介しています。
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最後は実際の音を客観的に聴き調整
各パートとも自分の音に意識がいきがちですし、音のバランスは好みもあるので、最後は演奏を録音しメンバで聴いてああやこうやと意見交換するのが有効です。
スタジオ練習においては爆音も自動でリミッタカットしバランス良く録音できるICレコ―ダ(PCM)がおすすめです。僕はSONYのPCM A-10を利用しています。
各メンバがお互いを思いやって楽しくバンド活動ができるとよいですね!
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