MP3やMDが出るまえの1980-90年代、CDを借りたあとの一大作業はカセットテープへの録音だ。
カセットテープの長さは46分、54分、60分が主流でその間の分きざみのものは基本ない。47分の長さのアルバムだったら54分テープだと無音時間7分がもったいないのでなんとか46分テープに収めようとする。カセットテープには若干ののりしろがあり、46分テープだったら47分程度は録音できる。46分テープでは片面23分+数十秒ずつに収まるよう勝手に曲順を変え、曲間の無音の時間は数秒録音を止めて録音可能時間を少しでもかせぐなど無理やり1本のテープにねじ込む。さすがにアルバム全体を雰囲気づける最初と最後の曲順は変えたくないが、たいていのアルバムは最後の曲が壮大で、感動的で、フェイドアウトで終わる。だんだん曲音が小さくなっていく段階(結構な長さで数十秒、場合によったら1分を超える)で録音中にテープが切れないかヒヤヒヤする。
お気に入りのアルバムはちょっと奮発して音質がノーマルテープより良いとされるメタルテープで録音。もちろんその場合は上書き録音防止のツメを折る。ノーマルテープとの音質の違いをどこまで感じることが出来ていたかは怪しいが気持ちが全然違う。大事な大事な曲のつまったテープ。ただいくらメタルテープでも何度も何度も聴くとテープが伸びて若干音が悪くなる部分が出てくる。それがまた愛着に変わる。
そういったテープが世代の人はそれぞれあるかもしれないがそう本数は多くはないのではないか。
CDレンタル1週間という有限の時間のなか、カセットテープへの録音という一大作業を終え、ベットに横たわり、歌詞カードを見ながら極上の曲たちを聞く至福のとき。
曲をある程度聴いたらアルバム名と曲名リストを書き出すことを忘れてはいけない。こすって文字を貼り付けるシートが流行った。はじめは黒だけだったが段々いろんなフォントや色が出てきてカラフルに。たくさん色を使って作ってみるが結局ケバケバしくて、シンプルに黒で統一したほうがカッコいいと気づく。
僕が今でも大事に保存しているカセットテープはサザンオールスターズ1985年発売CD2枚組の超大作アルバム「KAMAKURA」だ。何度も大掃除で捨てられてしまう危機を逃れてきた。さすがに同アルバムはMDやMP3にも保存し何百回も聴いた。下手なレタリング、かすれた音、世界に一つだけの自分のカセットテープ。